IGNITON_anothercase
「先輩って、結構落ち込みやすいんですね!」
タナベは花瓶を運びながらベットで放心しているハチに言った。
「私にはいろいろ言うくせに。 でもだんだん長く絶えられるようになってきたじゃないですか!
リハビリの効果ですね。今日なんて20分も…」
はっとするタナベ。話題を変える。
「フィーさんと、ユーリさんから連絡がありました。
今…トランクルシティーだからもう少しでこっちに着くって。」
沈黙を続けるハチ。
間を置いて優しい声でタナベが言う。
「…先輩、地球に戻ったほうがいいんじゃないですか?」
その言葉にハチがゆっくり視線を送る。
穏やかな目をしてたたずむ自分自身と目が合った。
「っ…おま…え…」
ハチは手足が冷たくなっていくのを感じた。
「…そうだ。地球に帰れ。ここはお前の居場所じゃない。」
あくまでも静かにハチマキが言った。
わなわなとハチの手が震える。
ぎりっと奥歯を鳴らしてEVA服のむなぐらを掴み、そのままベットに叩きつけた。
ハチは自分の冷や汗と動悸に息があがる。
「どうしたハチマキ。手が震えているぞ。」
びくっとするハチ。
「うるせぇ!!」
むなぐらを掴む手に力が入る。
「ははっ。」
ハチマキの口の端が歪む。
「何がおかしい!!」
余裕な笑いをするハチマキに食って掛かる。
「そんな薄布だけで、宇宙で生きていけると思っているのか?」
はっとするハチ。
足元に青く光る地球が見える。見上げると漆黒の闇が広がっていた。
恐怖で意識が遠のきそうになる。
ぎゅっと目を閉じ、首を左右に振る。
「黙れ!!」
ガッとハチマキの首に手をかける。
「返せよ!!そのスーツも!その顔も!俺のもんだ!!」
ハチがグググっと両手に力を込めていく。
ハチマキは口元に薄笑いを浮かべながらされるがままになっている。
さらに力を込めようとした時、ハチの腕に白い手が触れてきた。
やわらかい手の感触にハッと我に返る。
タナベが顔を真っ赤にして歯を食いしばっている。
「タナベ?」
ハチは短く言った。
力の緩んだハチの手をタナベが自力で振り払う。
タナベが涙をこぼしながら激しく咳き込む。
「あ…」
ハチはタナベの首についた自分の手形を見て息が止まる。
そのままバッと身を翻して出口へ飛び出そうとする。
「せんぱい!!」
かすれた声をあげて慌ててタナベがハチの寝巻きの端を掴む。
ハチはタナベを見向きもせずに出口へ向かおうとする。
がしっがしっとタナベは両手でハチの寝巻きを掴みなおして言う。
「せんぱい、待って!逃げないで!」
ハチはそれでも出口へ向かおうとする。
「…おいていかないで…お願い…」
ハチの背中に額をあて、泣きそうな声でタナベが言った。
その声に、ハチはばっとタナベの方へ振り返る。
タナベはハチの激しく怒ったような表情にひるむ。
カタカタとハチの肩と手が震えているのに気づく。目には涙がたまっていた。
「せんぱ…」
ハチの顔に手を伸ばしたが、手首を掴まれ無理やり口を塞がれる。
ガチッと歯と歯がぶつかる音がした。
「つッ…!」
ハチが痛みで顔をしかめてタナベから離れる。
唇から血が滲んだ。
「せんぱい、血が…」
タナベがハチの唇に触れようとするが、その手もハチに掴まれる。
ハチは再びタナベの口を塞ぎそのままベットに押し倒す。
タナベが血の味に顔をしかめる。
両手をふり解こうと腕に力を込めるが、さらに強い力で押さえつけられる。
長いキスにだんだん息ぐるしくなってくる。
タナベは顔を横に振ってハチから逃れる。
「せんぱ…苦し…」
そういい終わらないうちにハチが再び口を塞ぐ。
苦しさに歯を食いしばるタナベの口を舌でこじ開け、そのまま滑り込ませる。
「んッ…!!」
いままでに感じたことの無い感覚にタナベの頭が混乱する。
先ほどよりも強く血の味を感じる。
抵抗もできず、されるがままになるタナベ。
やがてハチは右手でタナベのシャツをジーンズから引き出し、下着の上から胸をわし掴みにした。
目を見開いてビクッとタナベの体が跳ねる。
自由になった左手でハチの体を押しのけようとする。
唇が離れた瞬間に大きく息を吸って叫ぶ。
「痛い!…せんぱい!!やめっ…!」
そのままハチの体を力いっぱい押しのける。
病室に二人の荒い呼吸がけが響く。
ハチはベットに座り込んだまま顔をあげようとしない。
「…せんぱい…」
タナベが話しかけようとすると、ハチは身を翻して
素早く病室を出て行ってしまった。
「待っ…!!」
追いかけようとするが、膝が震えて立ち上がることができない。
タナベはその場で座り込んで自分の首をさすることしかできなかった。
ハチは何の迷いも無くエアロックの方へと向かう。
すぐ後ろにもう一人の自分の気配を感じていた。
「タナベに…甘えてもだめなんだ! 俺は、俺だけの力でっ…」
額の絆創膏をむしり取って自分自身ともう一人の自分に言い聞かせるように言った。
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