sono1

「おまえ、親の七光りは大嫌いじゃなかったっけ?」
「ええ。今でもそうよ」
「だったら…!」
「出世したいのよ。」
「え?」
「ドルフ事業部長はコネや学歴に縛られない人よ。
結果をだせば、彼は評価してくれる。」
「出世してどーすんだよ。」
「よけいなお世話ね。私たち、もう終わったはずでしょ。」
「…俺が終わらせたんじゃねぇよ。」
ムッとするクレア。スゥッとハチに寄る。
「…なんだよ。 ……!!」
クレアの手がハチの股間をグッと握り締める。
「なっ、何しやがるテメェっ…!」
「本当に分からないの?」
「何のことだよ!!」
「私は、あきらめてなんかいないの。」
つぶやくように囁くクレア。
「?? 何か言っ……うぁ!」
ジーンズのチャックを開けハチのモノを取り出し、一気にのどの奥までくわえ込んだ。




sono2

ハチがクレアの手を引っ張ってこもったきり出てこない。
タナベはそわそわしながらフィーに尋ねる。
「フィーさん、あの、管制課の人って先輩の…」
「んー?気になるなら直接聞いてみたらいいんじゃない?」
「…はぁ、直接…。」
「でもまぁ、あんまりヤボなこと聞くんじゃ…ってタナベ?」
「直接…直接…」
タナベはフラ〜っとハチの所へ向かう。


「うっあ…もうやめっ…」
暑いのか寒いのかわからないのに、体中から汗ばかり出てくる。
ハチの言葉も聞かず執拗にハチのモノを舐め続けるクレア。
やがて体の奥から熱いものがこみあげてくる。
「うっ…あああああ!!」
「先輩!? どうし…」
シュンッという機械音とともにタナベが顔を出す。
「…?」
目の前で起こっていることに理解できず、ゆっくり首をかしげるタナベ。
「出てけ!!」
ハチに急に叫ばれてびくっとする。
「今すぐだ!!」
「あ…の…せんぱ…」
「早く!!」
悲痛な叫びをあげ、両目にこぶしをぐっと押さえつけるハチ。
大声を出されて身動きが取れなくなったタナベにクレアが口をぬぐいながらふりむく。

「You copy?」




sono3

バンッと大きな音を立ててタナベは身を翻した。
「…とんだ所を見られちゃったわね。」
あくまでも冷静に言葉を発するクレア。
ハチは服も調えず、まだ両目をこぶしでふさいでいる。
「…ハチ?」
「…テメェもだ。」
「え?」
ハチが顔をあげる。
「テメェも出てけ!!」


タナベは今見た出来事を、まだ頭の中で整理することができなかった。
どこへともなく言われたとおり引き返してきたが、
どこまで行けば許してもらえるのかも分からなかった。
やがてふらふらとユーリの前を通り過ぎる。
いつもと違うタナベの様子にユーリが声をかける。
「タナベさん?どうかしましたか?タナベさん!」
誰かに呼ばれた気がしてタナベがユーリの方へゆっくり振り向く。
「一体どうしたんですか?ぼーっとしてしまって。」
「ユーリさん!!!」
「は、はい!!」
思わずしゃきっとしてしまうユーリ。
「男のひとの!ちんちんって!舐めるものなんですか!!?」
「はい!?」
突然なタナベの発言に、さすがのユーリも硬直した。




sono4

ハチの有無を言わさない叫びに、言われたとおりに出てきたクレア。
「ねぇねぇクレアさーん。まだ着かないのかなぁ?」
デブリ回収の予想以上の地味な作業にコリンがしびれを切らして言った。
「あ、はい。作業が終了しましたら、すぐに回収へ向かいます。」
クレアは仕事に気持ちを切り替えて言った。
「ふーん…。」
「もう少々お待ちくださ…」
「あのさぁ、クレアさんってカタくてすんごいマジメに見えるけど、実際はぁ以外と…」
一瞬顔を引きつらせるクレア。
それを見逃さないコリン。ふふんっと笑った。
「…何か?」
「ん〜ん。べっつにぃ〜。」


タナベとユーリの間の空気はまだ固まったままだった。
ユーリが口を開く。
「あの…タナベさん?」
タナベの顔がどんどん赤くなる。
「あ…あたし、何言って…」
顔から火がでそうだった。
「だって、だって先輩が…う…うっく、うぅっ、うぇ、うわああああああん!!」
「タ、タナベさん!」
急に小さな子供のように泣き出してしまったタナベに
ユーリが思わず自分のTシャツで顔を拭う。
「一体、どうしてしまったんですかタナベさん…」
「うええええええん!!」
「ど、どうしよう…」




sono5

「ふぁ〜あ、後もう少しですよっ…と。」
コクピットで後ろに大きく伸びをしたフィーの後ろに音もなく立つハチがいる。
「うわーああぁ!びっくりしたっ…。ハチ!声ぐらい掛けなさいっての!」
ハチはうつむいたまま黙っている。
「…ハチ?」
「あのさぁフィー、俺…」
「ん?」
「……」
一度口を開いたきり、また黙り込んでしまったハチ。
逆光で表情が見えない。
フィーがそっと近づいて顔を覗き込む。
「ハチ?」
ぐっと唇を横に閉めて泣いてしまうのをこらえているようだった。
フィーはふぅっとため息をついた。
「まったく、何があったんだか…タナベは?」
「…っ。」
ハチは小さく震えているようだった。
フィーはもうひとつため息をつき、ハチの頭を抱え込むようにして抱きしめた。
「こうなるとアンタもうちの息子となーんも変わんないねぇ。」
ぽんぽんとハチの背中をたたく。
「3年前を思い出すよ。」
そう言うとフィーはふふっと笑った。
フィーの手があまりにも優しく抱きしめるので、ハチは思わず涙をこぼした。




sono6

「うぅ…」
「タナベさん、大丈夫ですか?もうすぐミッションですが…」
タナベをなんとかなだめてユーリは言った。
「はい、大丈夫で……ううぅっ!」
自分の涙やらハナミズがついてしまったユーリのTシャツを見て
申し訳ないのと恥ずかしいのとでまた涙があふれてきた。
「ごめんなさい、ユーリさん、ごめんなさい!」
「え?ああ、気にしないで…」
「Tシャツ、クリーニングしてお返ししますから!!」
タナベはぐいぐいとユーリのTシャツをひっぱる。
「あ、だ、大丈夫ですから、本当に気にしないで…」
ユーリの言葉も聞かず、タナベはTシャツの両肩に手をかけぐーっとひっぱった。
そのとき
「コォォラァァ待ちやがれぇこのバカハチッ!!」
フィーの大声で一瞬ユーリが油断し、まんまとTシャツを脱がされる。
「なんだよ!本当のこと言っただけだろ!?」
フィーがこぶしを振り上げてハチを追いかける。
「人がやさぁしく介抱してやったのにっ…タバコくせぇだと!?」
「だから本当のことだろ!? …あ。」
タナベと目があった。
「つかまえたぞフンッ!」
ゴっと鈍い音をたててハチの頭をなぐるフィー。
「ぐあっ」
ハチは頭を抱えこむ。
「ん〜?」
フィーがユーリと目を赤くしたタナベを見る。
「……。」

「船長、もうポイントには到着したのですか?」
クレアがコリンと現れる。
ちらとクレアがハチを見る。
ハチがキッとクレアを睨み返す。
「あぁ、あとコイツラが外出るだけだけど…。」
ふぃっとなにくわぬ顔でクレアはハチから視線をはずす。
「そうですか。予定より若干遅れが出ています。二人とも早く準備を。」
ハチがタナベのほうへ首をむける。びくっとするタナベ。
「…いくぞ。」
「う……」
ユーリのTシャツをぎゅううっと握りしめる。
「さっさとしろ!!」
「あ、あい…コピー…」




sono7

エアロック内に重い空気が流れる。
タナベは時々鼻をすすりながらちらちらとハチを見る。
「…なんだよ」
「いえっ…なにも…」
ふいっとハチから目を離すタナベ。
思わずムッとしたハチはガッとタナベのあごに手をかけ
自分の方へ向かせた。
じーっとタナベを見るハチ。
その視線に耐えられずに、また涙があふれるタナベ。
「うぁ…」
「コノ…なんでテメェが泣くんだよ!!」
「だって!だって先輩が!あ、あんなこと…!」
「うるせぇ!好きでやってたんじゃねぇよ!!」
「好きじゃないのにできるんですか!?そんなの…!」
「愛だのなんだの言う気か? そんなもんで全てのことが説明つくなんて思うなよ!?」
「うわあああん!!」
「泣くな!見られたのは俺なんだぞ!泣きてぇのはこっちなんだよ!!」
「ひぃん…」
「くそっ…テメェなんざ鼻水で溺れちまえ!」
ハチはタナベのあごを振り払った。
「ハイハイそこまで。とっとと手ぇ動かしてちょうだい。時間ないんだから。」
コックピットからフィーが話しかける。
「僕が行ったほうが…よかったでしょうか。」
ユーリはつなぎの上を着なおした。
「あーもうあいつ等は…」
フィーが大きなため息をついた。




sono8

黙々とデブリをひろう二人。
長い沈黙の中、極限環境でデブリをひろい続けることが
こんなにも苦しいものなのかとタナベは思った。
気がつくと目の前のデブリをひろい終えたことに気づく。
「あ、あの、先輩。」
のどがカラカラに渇いている。
「こっち、終わりましたけど…」
ハチがプライベート通信の指示を出す。
何だろう、と思いながらも指示通りに設定する。
「何か…」
「おまえ、ユーリに妙なことしゃべってないよな。」
「えっ…」
先刻の自分の失態が脳裏をよぎった。
「まさかおまえ…!」
「しゃべってなんか!…いません…。しゃべれるわけ…」
「そうか。…なら…いいけどよ。」
ハチにうそをついたことに罪悪感を感じるタナベ。
「フィー!ミッションコンプリート。帰投する。」
「I copy まだ時間押してるの。急いで。」
「アイコピー。タナベ!さっさとしろよ。」
「……」
「タナベ!おい聞いてんのか!?」
タナベは意を決して言う。




sono9

「ユーリさんは!もし…そんな話を聞いちゃっても、
人の嫌がるようなこと絶対しないと思う…。」
「あ?なんだよ急に。おまえユーリに気ぃでもあんのか。」
見当違いなことを言うハチに拍子抜けするタナベ。
「そんな…!そりゃガサツな先輩と比べたら
ぜんぜんユーリさんの方が素敵ですけど…そういうことじゃなくて…」
エアロックに到着し、フェイスカバーをはずすハチ。
「けっ!別に意地はるようなことじゃねぇだろ。」
あまりの鈍感さにむっとするタナベ。
「意地なんかはってません!意地を張ってるのは
先輩の方じゃないんですか!?あの…管制課の人とか!!」
最後の一言がハチの逆鱗に触れた。
「テメェ…何を…」
「ほら!そうなんだ!先輩、管制課の人が好きなんでしょう!?」
「クレアは関係ねぇだろ!!」
「関係なくなんかない!!
それとも先輩は!好きでもない女の子にあんなことさせて…!!」
ハチの手がタナベの胸ぐらをぐっと掴んで強引に引き寄せる。

一瞬の沈黙。

「…それ以上なんか言ってみろ。その減らず口、二度ときけな…」
言うが早いか、タナベの両手がハチの胸ぐらを掴むと後ろへ大きくのけぞり

ガンッッ!!




sono10

「ぐあっ!!」
ハチは額に受けたあまりに大きな衝撃で、体が反転し大の字に壁へとぶつかる。
タナベがむん!とガッツポーズを決める。
「いってェ…テメ、なんつぅ石あたま……」
目の前に星が飛んでるのがわかる。
「あたしのほうが正しい!!」
「…はぁ!?」
タナベの額が真っ赤にはれている。
「頭突きだって、あたしのほうが強い!」
「おま…何言ってっ…」
まだ目がまわってる。
「先輩、なんで素直になれないんですか!?
あの人だって、きっと、先輩が…」
続く言葉を出せなかった。
あたし、なにを言ってるんだろう。タナベは思った。
素直になれていないのは…。
「クレアとはもう終わったんだよ!もう…終わった事なんだ…!」
「だからなんで先輩は!!」
急にタナベの目の前がゆがんだ。頭の中がぐらぐらする。
「もう…俺にかまうな。うっとおしいんだよ! ……っておい!おまえどうかし…」
空中でうずくまるタナベ。

「頭…痛い…先輩の…石あたま…」




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